関節リウマチ

関節リウマチとは

膠原病の中で最も身近で、日本に約80万人の患者さんがいるとされ、罹患率は0.6-1.0%ですので、関市内には約800人いると推測されます。
関節リウマチは、喫煙や歯周病、遺伝子などの多くの因子が関連して発症する、関節の痛みと腫れを起こす、慢性的な破壊性の関節炎を起こす疾患です。
関節痛の始まりは、半数近くが手指で、手首や足趾、膝、肩が続きます。

参考文献
2015年リウマチ白書

関節リウマチの診断

関節の痛みや腫れ(関節炎)が出た時に、①手や足、肘の関節炎、②複数の関節炎、②関節が変形してきた、③CRP(C反応性蛋白)が高い、④RF(リウマチ因子)が高い、⑤親族に関節リウマチ患者がいる、などに該当したら関節リウマチを積極的に疑います。
血液検査では、非特異的な炎症をみるCRPや赤沈、関節滑膜の炎症をみるMMP-3、関節リウマチに特異的なRF、抗CCP抗体、抗ガラクトース欠損IgG抗体などを測定します。関節リウマチ以外の疾患を鑑別するために、他の膠原病や感染症の検査も併用します。
関節X線や関節エコーにより関節炎や骨びらんの評価も当院で行うことができます。
これらで多くは診断できますが、それでも診断に迷う時などはMRIで評価を行うことがあり、その場合にはMRI撮影可能な医療機関へ紹介します。

関節リウマチの治療

関節リウマチと診断し、疾患活動性を評価した後に治療方法を考えます。
治療薬には、主に内服薬、生物学的製剤(皮下注射製剤・点滴静注製剤)があります。
どの薬剤が適切かはそれぞれの薬の利点や欠点を考慮して患者さんごとに判断します。
①疾患活動性の重症度、②年齢や性別、③基礎疾患と臓器予備能(肝臓、腎臓、血球数、感染症を起こしやすい疾患の有無など)、④アレルギーや薬剤副作用の既往、⑤併用薬剤の種類、⑥受診可能な頻度、⑦自宅で自己注射が可能かどうか、が治療決定のポイントとなります。
『関節の痛みや腫れ、生活への影響度、血液検査から求められる活動性、関節リウマチの合併症』などを考慮して治療目標を個別に定め、それに向けて3-6か月毎に治療方法を見直し、関節の変形を防ぎ、日常生活や仕事への悪影響を減らし、健康寿命を延ばすことを目指します。
高額な薬もありますので、公的助成制度も活用しましょう。

良く使用される内服薬

メトトレキサート(リウマトレックス®など)

関節リウマチでまず一番に検討される薬で、アンカードラッグと表現されます。臓器予備能に問題なければ積極的に使用し、メトトレキサートが使用困難であれば他の薬を検討します。口内炎、胃腸障害、肝機能障害、感染症(肺炎、蜂窩織炎、尿路感染症、ウイルス感染症など)が起こしやすい副作用です。

サラゾスルファピリジン(アザルフィジンEN錠®)

感染症副作用が最も少ない薬ですので、疾患活動性がそれほど高くない高齢者や感染症を起こしやすい方に適応されます。皮疹、発熱、肝機能障害が起こしやすい副作用です。

ブシラミン(リマチル®)

ブシラミンも感染症副作用を起こしにくい薬です。疾患活動性がそれほど高くない症例に使用されます。皮疹、胃腸障害、肝機能障害、尿蛋白が起こしやすい副作用です。

イグラチモド(ケアラム®)

サラゾスルファピリジンやブシラミンと並んで単独で開始されることが多い薬で、メトトレキサートとの併用効果も期待できます。肝機能障害、胃腸障害が起こしやすい副作用で、ワーファリンカリウムとは併用禁忌でNSAIDs(ロキソプロフェンなど)との併用も注意が必要です。

タクロリムス(プログラフ®)

費用が比較的高額になる問題もあり、第一選択で使用開始されることが少なく、上記薬剤などの効果不良時などに使用されることがあります。量は3㎎/日まで使用可能ですが、0.5-2mg/日で開始して、血液濃度測定をしながら調節をします。腎機能障害、胃腸障害、高血糖、感染症が起こしやすい副作用です。

副腎皮質ステロイドホルモン(プレドニゾロン®など)

昔から使用されている薬で、服用したその日から効くという即効性があり、臓器予備能に関係なく誰にでも使用可能な薬のため、高齢者に比較的多く使用されています。他の内服薬が十分な効果を発揮するまでのつなぎとしても使用できます。

使用量は様々ですが、短期間使用(3-6か月以内)で7.5㎎/日が上限と考えて使用しています。しかし、高血糖、骨粗しょう症、胃潰瘍、感染症、食欲亢進、体重増加、満月様顔貌、中心性肥満、不眠症、白内障などの副作用が多くみられ、用量依存的にその頻度は増加します。さらに、1か月以上持続して使用する場合には、急な内服中止は副腎不全という重篤な状態を引き起こすことがありますので、注意して減らしていきます。便利な薬ですが、最小量・最低限を意識した慎重な使用が望まれます。

内服薬以外に注射製剤で使用することもできます。食事がとれない時には点滴静注で投与します。関節炎や腱鞘炎が起きている部位に、関節注射をすることで早期の炎症軽減効果を期待できます。変形性関節症でも使用されるヒアルロン酸製剤の関節注射でも関節痛は和らぎますが、強い炎症が起きているときにはステロイド製剤を使用します。多くの関節に注射することはできませんので、1-2か所の関節炎に対して使用します。副作用には出血、感染症、腱断裂、関節軟骨破壊などが報告されていますので、頻回には実施できません。

JAK阻害薬(ゼルヤンツ®、オルミエント®、スマイラフ®、リンヴォック®、ジセレカ®)

経口薬の中で最も効果が高く、生物学的製剤と同等、あるいは同等以上の効果があり、他の薬でコントロールが難しい患者にも有用です。しかし、費用が高く、感染症、特に帯状疱疹のリスクが高いと言われ、血栓症や悪性腫瘍発症といったリスクも検討する必要がありますので、簡単に使用すべきではありません。関節リウマチ診療ガイドライン2020などでは上記の経口薬効果不良時に検討しますが、私はリスクを考慮して生物学的製剤の適応を優先的に検討し、その次の選択肢として考えることが多いです。

生物学的製剤

生物学的製剤は皮下注射もしくは静脈注射で投与します。
費用は高いですが、経口薬効果不良時にも効果が期待できます。
JAK阻害薬を除く経口薬は効果が出るまで2-4週間程度かかり、効果と副作用を見ながら漸増調節をしなければならないことが多いですが、生物学的製剤は基本的には漸増調節が不要で、1-2週間以内に効果を実感できることがあります。
経口薬の効果が足りない、経口薬は副作用で使用しづらい、早く症状を減らしたい、関節リウマチの活動性が高い、関節の変形が進む、などの時に良い適応となります。私が診察している関節リウマチ患者のおよそ3割程度が使用しています。

生物学的製剤の紹介

  • TNF阻害薬(インフリキシマブ®、エタネルセプト®、アダリムマブ®、ゴリムマブ®、セルトリズマブ・ペゴル®)
  • IL-6受容体抗体(トシリズマブ®、サリルマブ®)
  • T細胞活性化阻害薬(アバタセプト®)

それぞれの製剤ごとに、皮下注射か点滴注射、投与量や投与間隔、自己注射(自宅で治療)が可能かどうか、費用などが異なります。製剤ごとの特徴がありますので、患者さんごとに個別に推奨される薬を提案します。
副作用は主には感染症で、肝機能障害や腎機能障害などの臓器障害は経口薬と比べて起こしにくいと考えられます。逆に考えると、感染症さえ気を付ければ、肝臓や腎臓などの臓器障害があっても使用可能な薬となります。

もう一つの生物学的製剤

抗RANKL抗体(プラリア®)

関節リウマチの生物学的製剤として紹介されることはあまりありませんが、3つの特徴を持つ、とても重要な薬です。

  1. 免疫抑制をかけることなく、関節リウマチの骨びらんを抑制します
  2. 関節リウマチに合併しやすい骨粗しょう症にも有効です
  3. 副腎皮質ステロイドホルモンによる骨粗しょう症の予防や治療にも有効です

関節リウマチによる関節の変形があるけど感染症が心配で免疫抑制薬を使用したくない、骨粗しょう症を合併している、副腎皮質ステロイドホルモンを使用している、などがあれば積極的に使用しています。
生物学的製剤の中では費用が安く、6か月に1回の皮下注で良いのも使いやすい理由の一つです。
主な副作用は低カルシウム血症です。そのためビタミンD製剤内服を必ず併用します。稀で重篤な副作用には顎骨壊死があります。口腔内衛生環境不良や抜歯との関連が言われていますので、プラリア®投与前に、歯科で抜歯が必要な歯がないかなどの口腔内チェックをしてもらい、定期的な歯科検診を受けることをお勧めします。